Interview

2022.11.29

生理に個人差があることを
もっと知って欲しい

写真家

中村早さん(38歳)

写真家歴17年の中村さんは、パートナーと2匹の猫とともに暮らしています。さまざまな企業の商品撮影や雑誌のインタビュー撮影を行いながら、花や男性ヌードをモチーフとした写真作品を制作しています。

初めて生理になった日のこと

— 初めて生理になった時のことを覚えていますか?

覚えています。結構早かった気がしますね。小4か小5だったと思うけれど、知識はあったかな。「あ、生理なんだ。生理が来たんだ」というのはわかりました。

母親が抱きしめてくれて「おめでたいこと」と認識

— 家族はどのような反応でしたか?

すごく強烈に覚えているのは、母親に言った時のことです。自分から「多分、これ生理だと思うんだけど」と言ったら、「おめでとう」ってギュッと抱きしめてくれました。私の母親って、愛情表現とかそんなにする人じゃなかっただけに、そのことは記憶として残っています。

それで、「生理って、いいことなんだな、おめでたいことなんだな」って思いました。だからネガティブな印象はあんまりなかったです。

父親の反応

— 初めて生理がきた時、父親とのコミュニケーションで記憶していることはありますか?

父親の存在は感じられません。記憶があまりないです。生理になったことは母から伝わっていたかもしれないけど、それで父親が私になにかを言ってくるとかはなかったと思います。赤飯が出たような気がするから、それでわかったのかなという感じですが、父親とそういう話をした記憶はありません。

はじめは生理用品を選べなかった

— 当時、生理用品の知識はありましたか?

家のトイレの棚の上にカゴがあって、そこに生理用品が入ってたみたいなんですが、生理になって母から教わって、ここにあったんだ、みたいな…。

生理用品て、羽根つきと羽なしがありますよね。うちの母は羽なしを使っていて、私は、羽ありのタイプがあるというのをだいぶ後に知りました。自分で買うようになって初めて知るから、夜用、昼用とかも、自分が困って初めて変えようという意識になったんだと思います。

以前ラジオで、私と同じように生理用品は親が与えてくれたものを使い続けてしまうという話を耳にしたことがありました。だから、どれが自分に合ってるかをあまりポジティブに探さないっていうか、親に与えられたものを、なにかのきっかけがない限り変えないということがあると思います。私自身、「そっか羽ついてるとずれないんだ」みたいなことはだいぶ後で知りました。

生理は隠さないといけないことなのか

— 羽あり羽なしといった生理用品の情報はテレビCMでも知りますよね。

子どもの頃、テレビでナプキンのCMが流れていて、「あれ何?大人のおむつなの?」と聞いたら家族がシーンとなったという記憶があります。その時は、「これって言っちゃいけないことだったのかな…」と思いました。
やっぱりコンビニとかで生理用品を買っても、紙袋に入れられたりするから隠さなきゃいけないもののように思ってしまいますけど、「隠さないといけないことなのか?」ということはずっと疑問に感じていました。

生理痛が辛すぎる

— 生理痛について、個人の実感としては重い方ですか?軽い方ですか?

生理中は、常に鎮痛剤を飲んでないといられないくらい辛いです。鎮痛剤を飲んでないと動けない。最初はイブとかバファリンを飲んでいたけど、どんどん効かなくなって、結局ロキソニンを飲まないと全然仕事に行けない状態になりました。それが毎月で、生理の期間は短いのですが、生理前から結構体調が悪くて、きたらもう動けなかったです。

痛すぎ!救急車で運ばれた

— 生理の重さは、日常生活にも影響があるレベルの辛さですね。

はい。これまでに2回生理痛で救急車で運ばれたことがあります。一番最初に救急車で運ばれたのは、大学1年生の時。ラクロス部のマネージャーをやっていて、練習の後にトイレで倒れてしまいました。その時は、鎮痛剤が手元になかったから。

— 倒れたのは痛すぎて?

痛かったのもありますが、痛くて、トイレから出られなくて、脱水症状と過呼吸になって倒れてしまいました。外のグラウンドでものすごく暑くて、脂汗みたいなのがばーって出て、「早く戻らなきゃ」っていうのがあって過呼吸になって。

2回目に運ばれたのは、男の人と一晩ともにして、朝起きたら生理がきて、手元に鎮痛剤がなくてお腹が痛くなってしまった時です。出会って間もない人だったんですが、救急車を呼んでくれて一緒に病院まで来てくれました。

— 中学や高校の時も同じように重い生理痛がありましたか?

いえ、大学生くらいからだと思います。大学生の時に、突然お腹が痛くなって。年齢を重ねるごとに結構重くなっていっている感じがあります。

子宮内膜症がみつかった*

— 生理痛の重さを、病院で相談したりしていますか?

私は今、婦人科で治療中なんですけど、去年、子宮内膜症がみつかりました。もともと生理は重かったんですが、周期はちゃんとくる方です。

年々、本当に生理痛がひどくなっていて、鎮痛剤飲んでも「イデデデデー!」みたいな、立っていられないほどの強い痛みが続いていました。お腹が妊婦さん並みに張っていたので、大腸検査もしましたが何もみつからなくて。特に生理前に、ものすごく張っていたので、これは婦人科なのかなと思い行ってみました。それでエコーや血液検査、MRIなどいろいろ検査した結果、子宮内膜症と診断されました。

— 子宮内膜症が重い生理痛の原因になっていたのですね。

子宮内膜が子宮の内側ではないところにできてしまうんです。生理の時に流れる血液が卵巣や卵管などの子宮以外のところに留まってしまい、痛みをもたらすみたいです。不妊や卵巣癌の原因になる可能性があると言われていて、私の場合はチョコレート嚢胞っていう大きい血の塊みたいなのが卵巣にできていて、それが腹痛の原因なんじゃないかと言われました。

私は喫煙者ですがそれを先生に伝えたら、低容量ピルを使った治療もあるけれど、ピルとタバコは相性が悪く血栓症のリスクが高くなるので心筋梗塞とかそういうのになりやすいから避けたほうがいいと言われました。それで、黄体ホルモン製剤という薬を飲む方法で生理を止める方法で治療しています。黄体ホルモン製剤は女性ホルモンの分泌をゆるめて、卵巣の機能を抑えて子宮内膜が増えるのも抑えてくれる薬だそうです。治療のおかげで腹痛は今までよりも改善されました。黄体ホルモン製剤以外にも手術や月経を一時的に止めるような薬での治療もあるそうですが、年齢や妊娠を希望するしないなどで治療法も変わるみたいです。

*子宮内膜症について、本人が感じる症状や、婦人科で診断されたことについて話していただいています。

仕事への生理の影響

— 生理痛や、生理前後の状態が仕事に影響することはありましたか?

私の職場では、数年前から生理休暇を推進するようになったので、周りの女性は結構休めるようになりました。普通に「生理休暇もらいます」みたいな感じで、ライトに言える雰囲気ではあります。

— それ以前は?

とにかく鎮痛剤を飲んでなんとか仕事していました。撮影の仕事は1日立ちっぱなしだったり、重い機材を運んだり、身体を結構動かすので腹痛がひどい時は辛かったですね。撮影では集中力も必要となるので生理中の激しい感情の起伏をコントロールするのも大変でした。なので辛い時に休めるようになって本当に良かったです。

生理を話題にすること

— 恋人や友人に生理の話をすることがありますか?

生理中というのを隠すことも別になかったと思います。生理痛がしんどかったのもあるから、それで体調が悪いんだよっていうことを言わないとわかんないだろうと思ったし、あんまりそこは隠してきてないです。

生理に割と理解がある男性と付き合ってきたというのはあるかもしれません。辛さを共有してくれるというか。それはもしかしたら、付き合った人が姉妹がいたりするのは大きかったのかも。

生理中にセックスをしたこともある気がするけど、強要してくる人はいなかったです。私の方が、デートの時に、「頼むから生理こないで!」とずっと祈っていました(笑)。自分はしたいけど、するにはベストの状態がいいから、デートの時に生理になってくれるなという気持ちはありました。それも20代の時の話で、年齢を重ねて生理が重くなっていくにつれそういう気持ちになれないくらい生理中は身体がしんどかったですね。

婦人科を受診するハードル

— 生理痛が耐えられないくらいになるまで婦人科に行かなかったのですか?

人に、どこの病院がいいのかな?という相談もなんとなくしづらさくて。婦人科に行くこと自体に多少抵抗があるのではないかと思います。妊娠以外で婦人科にかかるっていうことのハードルを、私は結構感じていたので、もっとライトにみんなが「生理が辛いから行こうかな」みたいな感じになるといいなと思っています。

個人差があることを知って欲しい

生理には個人差があるということをもっとわかって欲しいです。軽い人もいれば、めちゃめちゃ重い人もいる。生理休暇の問題とかも、自分の経験でしか語れないから、軽い人は重い人のことがわからないし、重い人は軽い人のことがわからないかもしれない。

だから、それをどうやって共有できるか、ということについてはすごく考えるところがあります。男女間でももっと話したほうがいいだろうし、私は自分のパートナーとはそうしてきたから、そういう風になっていくといいなと思いますが…。私はあまり女の子の友達がいなかったので、むしろ生理のことを同性と共有できてこなかったというところがあるかもしれません。

『パットマン』というインド映画がありますね*。生理について男の人が語ることの重要性も多分にあるのではないかとこの映画を観て気づかされました。フェミニズムは女の人だけの問題じゃないですし、女の人だから語れるというのではなくて、性別に関わらずオープンに生理について話せることが大事なんだと思います。

*『パッドマン 5億人の女性を救った男』R・バルキ監督、2018年制作。困難に直面しながらも生理用ナプキンの開発で社会を変えた男性の実話をもとにした物語。
https://bd-dvd.sonypictures.jp/padman/

※語り手の年齢、所属、生理の症状など掲載内容は取材当時のものです。

Profile

中村早 SAKI NAKAMURA:1984年東京都出身。写真家。2005年から男性のポートレイトやヌード、花や樹皮をモチーフとした写真作品を制作し、個展を多数開催。映画「STILL LIFE OF MEMORIES」(2018)では劇中の写真作品を担当。写真集『THEBOY』(2012)、『STILL LIFE OF MEMORIES』(2018)出版。
http://nakamurasaki.com
https://www.instagram.com/ikasarumakan/

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