2022.11.29
目立つことが嫌だった
思春期の生理
パタンナー・衣装ディレクター
momokoさん(38歳)
momokoさんは、アパレルのパタンナーとして活躍されています(パタンナー歴15年)。小学校と保育園に通っている2人の娘さんのお母さんでもあります。momokoさんの勤め先のブランドは、シーズンごとに新作を発表する自社の制作に加え、舞台衣装も多く手掛けられています。最近では、パタンナーとしてだけでなく、衣装のディレクターの立場でも仕事をする機会が増えているそうです。
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仕事のこと
— アパレルのパタンナーとして働いてどれくらいになりますか?
私の仕事の内容はさまざまなので、「職業パタンナー」と言ってしまうと本当のパタンナーさんとのギャップがすごいですが、お洋服のパターンに関わる仕事を始めて15年くらいです。今は、パターンだけをやっている専門職みたいなところから、内容が広がってきていますね。
— パタンナーとしての仕事以外にはどういう仕事をされているんですか?
他には、舞台衣装も担当しています。企画で入ることもあれば、デザインから入ることもある。会社の代表がデザインしたパターンをおこすこともあるし、必要な人材の割り振りや、依頼の指示内容を考えたり、生地の手配やスケジュールの組み立てなんかもしています。
— ディレクションのような立ち位置ですね。
そうですね、ディレクションという仕事の内容が全て当てはまるかわかりませんが、切り盛りするみたいな役割です。そういう総合的に全体をみる場合と、パタンナーというプレイヤーとして立つ場合とを行ったり来たりする感じでしょうか。
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初めて生理になった日のこと
— 初めて生理になった時のことを覚えていますか?
覚えています。小学5年生の11月3日。
— そこまで細かく覚えているのはすごいですね!どのタイミングで周囲に伝えましたか?
親には4日間くらい言えませんでした。でも、どうしたらいいかは知っていたので、適当にしていたっていうか。
— どうしたらいいかは、既に知っていたんですね。
たぶん、母が伝えてくれていたんだと思います。あと、保険体育の授業でも教わってましたよね。普通に家のトイレにはナプキンがあって、ナプキンを捨てるゴミ箱があって、母には「これ何?」って聞いていたりもしたんだと思います。「これって、なんなの?」って聞いたら、「これは生理っていうのが来た時に、ナプキンを使うから、それを捨てるためのもの」というような感じで教えてくれていたのを覚えています。
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大人を困らせようとする子どもだった
— 生理が来る前、生理について親や周囲から話を聞くことはありましたか?
うちは父親が頻繁に家に帰ってくる人ではなかったから、私の生活の圏内の大人は、おばあちゃん、おじいちゃん、母親、でした。その中で、生理のことをおじいちゃん、おばあちゃんに聞くのはなんか変なことだな、となんとなく思っていたと思います。
生理とは少し話が変わりますが、『コボちゃん』* の漫画で、大人がたくさんいる席に、子どもが「ねーねー、赤ちゃんてどこから来るの?」って言うと、大人がその場からさーっとはけていくという内容の回があったんです。それで「赤ちゃんてどこから来るの?」と聞くと大人は困るんだと知って、わざとそういうことを聞いて遊んでたりしてたんです。
ただ、そういった質問もおじいちゃん、おばあちゃんにはしてなかった記憶なので、大人というか、「ママをどうやって困らせようか」ということを考えていたんだと思います。母は困るということはなくて、普通に教えてくれていました。決してオープンに会話をしていたわけではないですが、生理を含め、性ついての会話ができる対象は母だけでした。*『コボちゃん』1982年- 植田まさし作。読売新聞の連載漫画。主人公・コボちゃんと家族の日常を描いた4コマ漫画で、2021年1月7日に、一般全国紙の連載漫画として最多記録、通算13,750回を達成。
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— ナプキンはどのようなタイプを使っていましたか?
親が買っていたのを使っていました。家に、母がちょうどいいと思うサイズとか形状がいくつかあって、それを色々使ってみて、「ああ、これがいいかな」と思うのをずっと使っていました。私の母親は、メーカーでこだわるというよりも、羽あり、羽なし、量によって昼用夜用と種類別にいくつか揃えていました。別にロリエがいいとかメーカーでというよりは、その時一番安いものを買うようなタイプだから、私も家にあるものを色々使っていたと思います。中学生くらいになると、ドラッグストアに頻繁に行ってましたから、商品はそこでチェックして、「ママこれ買わないの?」と聞いていたことはあったように記憶しています。ナプキンを自分のお小遣いから買うなんてもったいなさすぎるから(笑)。
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「大人になること」への抵抗感
— 生理が来たことに対しては、どのような気持ちでしたか?
大人になることに対してちょっと抵抗感はありましたね。だから、ブラジャーをつけなければいけない、ということにも抵抗感がありました。
— それはどういう抵抗感だったんですか?たとえば、みんながブラジャーをつけ始めるから、その流れにのって自分もつけるのが嫌だ、というようなことですか?
そうではなくて、とにかく目立つのが嫌だったから…。当時は、そこまで意識的ではなかったと思いますが、違う自分になっていくことに対して、ポジティブではなかったということですね。変化に対しての抵抗感が大きかった。でも、それがなんでなんだろうと考えてみると、ただひたすらに注目されるのが嫌だったんだと思います。
— 「なんか変わったね」というような指摘をされることが嫌だった?
そう、それが嫌だった。もう、今はね、「どうだっていい」という感じなのですが(笑)。当時は、目立つこと、注目されることに対するコンプレックス的なものがありました。
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絶対炊かれたくなかったお赤飯
— 生理が来たとき、お赤飯を炊いてお祝いをしましたか?
お赤飯は炊いて欲しくなかったですね。ああ、思い出してきた色々。
5年生の夏に、両親が離婚をして、私は母親の実家に引越しましたが、それまでは父方の実家のおばあちゃんとおじいちゃんがいる環境で育ちました。住む家は違いましたが、おじいちゃんおばあちゃんと日中一緒に過ごすような環境で育っていて、おばあちゃんが、「momokoちゃん、生理はまだなの。お赤飯炊くわよ。」みたいなタイプの人でした。それがすごく嫌だったんです。とにかく、目立つのが。
父方のおばあちゃんは、割と強い人で、たぶん、そういう節目みたいなのを待ち侘びてたんでしょうね。わたしはすごく可愛がってもらったから。だけど、思春期を迎えるとだんだん鬱陶しい存在になっていって、そういうふうに言われるのが嫌で、知られたくなかったんだと思います。だから、生理になったらお赤飯を炊くものだってことはわかっていたけれど、炊かれたら困ると思って。目立つし、だれかに知られるというのがあったから、母親に生理が来たことを伝えたタイミングで「お赤飯はやめてくれ」と一緒に言った気がします。だから、お赤飯は炊かれませんでした。 -
目立つことがとにかく嫌だった時期
— 生理中の身体的な負担はどれくらいですか?
自分にとってはそこまで大変ではないです。あんまり人と生理について具体的に話さないから、人と比べてどうなのかはちょっとわからないです。たとえば、体調がすごく悪かったとしても、他の人と情報をシェアしてないから、実際自分がどんな感じなのかはわかってないんだと思います。
— 生理中、不快に感じることはありますか?
気持ち悪いな、みたいなことくらいですね。ベタベタするとかそういう身体的なこと。あとは、5年生だと、周りで生理になった子がチラチラ出始める頃で、背が高い子たちのグループはもうほとんど生理になっているという感じがあって。その時の記憶の中で嫌なこととして残っているのは、体調の不良というよりも一番はナプキンを持ってトイレに行かなければいけないとか、ナプキンを替える音が嫌だとか、そういうことですね。
— 音が嫌というのは、音が人に聞こえるのが嫌ということですか?
そうです。「あの子生理だな」ってわかられてしまうのがすごく嫌だったということです。身体の不調よりもそのことの方がすごく強かった。小学校高学年だと、「あの子はもう生理が来た」っていうのがなんとなくわかる時期で、来た子と来てない子に分かれる。その時点で、自分が来た方に認識されちゃうというのが嫌でしたね。あとは、生理期間中も嫌だ、ということですよね。ナプキンを替えていることがわかるのも嫌。公立の小学校だとそんなことは難しいと思いますが、理想的には、そういうのがわかりにくい完全個室だったらまだよかったのかな。
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ナプキンを開ける音で生理中と気づかれる
— 音が周りに聞こえるのが嫌、というのも目立つからということなのでしょうか。
「あの子生理が来た」というのは他の子の中でも知っていたし、「あ、ポーチを持ってトイレに行くから生理中だな」というのも知っていたし、自分が誰かとトイレに行った時に、カサカサカサみたいな音がすると「ああ、なになにちゃんナプキンを変えているぞ」ということがわかっていたから、自分もそういうふうに、生理中だとわかられてしまうのが嫌だったんですね。生理が恥ずかしいとか、生理がいけないことだというよりも、とにかく目立つのが嫌だったんです。目立つことが恥ずかしいと思っていたから、気持ちとしてはそういうものがベースなんだと思います。
— 今もそういう気持ちはありますか?
なくもないのかな、とも思うけど、今はどっちでもいいという感じですね。思春期の当時は、興味ある対象が常に自分みたいなところがあって。だから、一番興味ある対象が自分じゃなくなった時からどっちでもいいという気持ちになったんじゃないかなと思います。頭の中が他のことで忙しくなってきた時から、自分に対しての興味の順位がぐっと下がって、「どうでもいいなー」みたいな(笑)。
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仕事に没頭するとトイレに行くのも忘れてしまう
— 仕事中はどうしていますか?
たとえば、3、4時間おきに定期的にナプキンを替える、とかって、よく管理されてますねって思います。
— それぐらいで替えないと、もう、漏れちゃうから替えざるを得ない場合が…。
確かに。若い時とかも、そういうのもあったりしました。(注:ものすごく多い量でドバッと出てしまった時に)「わー」みたいな感じとかも。
— ありますね!脳内で「わー」って、1人で。
それを一番感じたのは産後でした。特に次女の産後のタイミングが一番でした。出産前から2日目とかは、動くと「わー」みたいなのはあったけど、次女の産後はその頻度が高かったですね。今は落ち着きました。
私ちょっと抜けてる部分があると思うんですが、仕事していると何時間経ったか忘れてしまうんです。「わーっ」ってなってから、「あれ?何分経ったっけ?」みたいな感じとか。だから、基本的にはトイレに行きたくなったタイミングでしか行かない。なのでトイレで、「これはもうちょっと早めに来ないと危なかったな」ということもよくあって、仕事に没頭していると忘れてしまう。生理じゃなくても、ふと気がついたらすごくトイレに行きたくなってた、とか。 -
「来月はいつ来るか」の想定
— 生理の周期は記録していますか?
生理の量や来る日は比較的一定していると思います。数日のずれはもちろんありますし、お腹痛いとかもあるけど、薬を飲むほどではないですね。
私は、ルナルナ(アプリ)を使っています。数字がダメで、先月の何日にきたとか全く覚えられないので。ルナルナは、何ヶ月分か記録しておくと、その周期を平均して、次は大体いつ生理が来るよ、というのを教えてくれるんです。機能的には、排卵日を知るとか色々できるみたいですね。私は、とりあえず次の月に生理がいつ来るか目安が知りたいだけだから、他の機能は使っていませんが。 -
3人ぐらいに腰を掴まれて、ひきずられてるみたいな感じ
— パートナーと生理について話すことはありますか?
あまり話さないかなあ。生理について話すこと自体は抵抗ありませんが。向こうは、興味自体ないっていうか。教えたりすることもありますけどね。3人ぐらいに腰を掴まれて、ひきずられてるみたいな感じ、こういう感じだよ、ってやってみたりするけど「うーん…」ぐらいの反応…。
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休むのに「生理」と言う必要はない
— 生理休暇を取ったことはありますか?
生理かどうかは別に言う必要がなくて、体調が悪かったら、「体調が悪い」って言うと、「無理するな、来るな」みたいになるから、そういう職場なんです。個人的には、どうして「生理」って言って休まなければいけないの、って思ってしまいますね。もし、言えない環境なのであれば、適当に「風邪です」と言えばいいのでは。
— 生理休暇を使ってみたいと思いますか?
そうですね。どういうものなのか知りたいという気持ちもあります。まずは使ってみたい、というような。制度として作られた仕組みをちょっと試してみようかな、みたいな。それで、自分で体験してみて、実際にその制度ってこうだよね、と考えるのが好き、なのかもしれません。
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感情のコントロールがどうしてもできない日もある
— 生理中は、毎月辛いわけではないということですが、仕事にはあまり影響はないのでしょうか?
そうですね。ない、と思っていました。でも、私は気分の波が元々激しくて、感情の振れ幅みたいなのも激しい。最近やっと安定的になってきたなと感じているのですが、それは、もしかしたら自身のことを分析できるようになってきたからかもしれません。
それでも、どうしてもコントロールつかない時があって、それが、生理が始まる何日か前なんですが、月に2日くらいあって、もしかしたらこれはPMS * なんじゃないかな、と思うようになりました。どうやっても、この方法、あの方法、どれをとっても、どうもイライラするなというときがあって…。それを認識したのは割と最近です。* 月経前症候群 premenstrual syndrome(PMS)
月経前、3~10日の間続く精神的あるいは身体的症状で、月経開始とともに軽快ないし消失するものをいう。症状は、精神神経症状として情緒不安定、イライラ、抑うつ、不安、眠気、集中力の低下、睡眠障害、自律神経症状としてのぼせ、食欲不振・過食、めまい、倦怠感、身体的症状として腹痛、頭痛、腰痛、むくみ、お腹の張り、乳房の張りなど。
参考:公益社団法人 日本産科婦人科学会 Webサイト
https://www.jsog.or.jp/modules/diseases/index.php?content_id=13 -
感情の揺れ動きを捉えられれば楽になる
— 感情のコントロールができない、ということについてはどう捉えていますか?
自分が若い時は、その感情に振り回されっぱなしだったから、それがなんなのかなと考えて、色々本を読んだりして。そしたらこういう話があって。これ、正確に覚えてる話じゃないからふわっと聞いて欲しいのですが、女性は、月に7回ぐらい性格が変わっちゃうらしいです。
— 7回性格が変わる…、わかる気がします。
そう、わかる気がする、と思うんですよね、自分でも。別人格がいる。そういうことを、みんながもっと知っていればいいなと思います。女子ってそういう生き物で、そういうものを飼いながら生活してるのよ、みたいな。だから、どの人格にも名前をつけて、「今日の私は〇〇です」みたいなことが起こり得る。そう理解した方が、生活は楽なのになと思います。7人出てくるというのはなんなのかと考えると、やっぱりホルモンの影響とかそういうことだと思います。そのホルモンのわかりやすい例が生理で、女性のそういう特徴を捉える意味でも、生き物としてこういう特徴がありますよっていうことが、もうちょっとシェアされていたら、楽に思う人はいっぱいいるんじゃないかなあ、という感じはしますね。
— 女性は感情的になりやすい、というのもよく聞く話です。
確かにそうですよね。ビジネスシーンではまだまだ男性が中心ですが、それは、女性は感情的になりやすいからというのも理由のひとつかなと思います。ただ、一流の人こそ、女性の能力に対してのポテンシャルを知っていたりするから、女子を多く採用すると聞きました。となると、たとえば黒人を迫害してきた歴史について、実は白人が黒人のことを怖かったから迫害したんだみたいな考え方も、もしかしたら、男性が女性を軽視してきたこととちょっと似ているのかな。男性も実は女性が怖かったのかな?って思ってしまいます。
※語り手の年齢、所属、生理の症状など掲載内容は取材当時のものです。